フリーランスとして仕事を始めたけれど、「開業届って出さなきゃいけないの?」「出すとどんなメリットがあるの?」と疑問に思っていませんか?
フリーランスとして活動を始めたばかりの方や、これから独立を考えている方にとって、開業届は少しハードルが高く感じるかもしれません。しかし、開業届は決して難しいものではなく、フリーランスとして活動する上で多くのメリットをもたらしてくれる重要な書類です。
この記事では、開業届の基本から、提出が必要な理由、具体的な書き方や提出方法、さらには開業届と同時に提出を検討したい青色申告承認申請書についても詳しく解説します。これからフリーランスとして本格的に活動していきたい方は、ぜひ参考にしてください。
開業届とは?提出が必要な理由
開業届は、個人事業主として事業を開始したことを税務署に知らせるための書類です。正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」と言います。
開業届の基本と提出義務
開業届は、税法上の規定により、事業を開始した日から1ヶ月以内に提出することが義務付けられています。この「事業を開始した日」とは、必ずしも売上が発生した日ではなく、事業を始める準備を始めた日や、事業を行う意思が明確になった日と解釈されることが多いです。提出を怠った場合でも罰則はありませんが、後述する青色申告のメリットを享受できなくなるなど、様々な不利益が生じる可能性があります。
提出が必要な理由と事業開始日
開業届を提出することは、あなたが個人事業主として活動していることを公的に証明する意味合いがあります。これにより、税務上の様々な手続きを進められるようになり、所得税の確定申告をする上で必要不可欠なステップとなります。また、一部の金融機関で事業用の口座を開設する際や、特定の補助金・助成金を申請する際にも、開業届の提出状況が問われることがあります。事業開始日は、実際に事業活動をスタートした日を記載しますが、明確な日付が不明な場合は、フリーランスとしての仕事を本格的に開始した日や、屋号を決めた日などを目安に設定しても問題ありません。
開業届を提出するメリットとは
フリーランスとしての活動を正式に開始する上で、開業届を提出することにはさまざまなメリットがあります。ここでは、特に大きな4つのメリットを紹介します。
1. 青色申告による節税効果
開業届を提出し、さらに「青色申告承認申請書」を提出することで、青色申告を選択できるようになります。青色申告は、最大65万円の特別控除が受けられるほか、赤字を3年間繰り越せるなど、税金面で大きな優遇措置が用意されています。これにより、白色申告と比較して大幅な節税効果が期待できるため、フリーランスとして活動する上で最も大きなメリットの一つと言えるでしょう。
2. 小規模企業共済に加入できる
小規模企業共済は、個人事業主やフリーランスのための退職金制度のようなものです。加入することで、掛金が全額所得控除の対象となり、節税効果が期待できます。将来の備えとして、また万が一の時のセーフティネットとしても非常に有用な制度であり、開業届を提出していることが加入の条件となります。
3. 事業用の屋号口座を開設できる
開業届を提出することで、屋号(事業の名前)付きの銀行口座を開設できるようになります。屋号口座は、プライベートの口座と事業用の口座を明確に分けることができるため、会計処理が非常に楽になります。また、取引先からの信頼度も向上し、ビジネス上のやり取りもスムーズに進められるようになります。
4. 事業の信用度が向上する
開業届を提出し、個人事業主として登録されることで、社会的な信用度が向上します。特に、企業との取引においては、個人事業主としての活動を明確にすることで、契約の締結や支払いなどにおいて信頼を得やすくなります。また、補助金や助成金の申請や融資を受けるとき、子どもの保育園を申し込むときにも、開業届の提出を求められるケースは少なくありません。
特に、開業したばかりで確定申告をしていない場合には開業届が事業の証明書の役割を果たしてくれます。
開業届の書き方と提出方法
開業届の作成は難しそうに見えますが、ポイントを押さえれば誰でも簡単にできます。ここでは、書き方と提出方法を詳しく解説します。
開業届は国税庁のWEBサイトからダウンロードすることができます。
⇒個人事業の開業・廃業等届出書|国税庁
開業届の主な記入項目

開業届の主な記入項目は以下の通りです。
①納税地
納税地には、原則として住民票のある住所地を記入します。ただし、事業所を別途構えている場合は、その事業所の所在地を納税地とすることも可能です。その際は、事業所の所在地を管轄する税務署に開業届を提出することになります。どちらを選ぶかは、ご自身の事業形態や利便性に合わせて判断しましょう。
②氏名・生年月日・マイナンバー
氏名、生年月日、マイナンバー(個人番号)は、ご自身の情報を正確に記入します。マイナンバーは、確定申告などの税務手続きで必要となる重要な個人識別番号です。誤りがないように、通知カードやマイナンバーカードを確認しながら記入しましょう。これらの情報は、税務署が個人を特定し、税務処理を適切に行うために不可欠な項目となります。
③職業
職業には、ご自身の事業内容を具体的に記入します。例えば、「Webライター」「プログラマー」「デザイナー」「コンサルタント」など、実際にどのような業務で収入を得ているのかがわかるように記載しましょう。特に決まった名称がない場合は、ご自身の事業内容を簡潔に表現する言葉を選んでください。この項目は、税務署が事業の内容を把握するための参考情報となります。
④屋号
屋号は、個人事業主が事業を行う上で使用する「事業の名前」です。例えば、「〇〇デザイン事務所」「△△コンサルティング」のように、ご自身の事業をイメージしやすい名称を設定できます。屋号は任意のため、必ずしも設定する必要はありませんが、屋号付きの銀行口座を開設したい場合や、事業のブランディングを強化したい場合には設定をおすすめします。後から変更することも可能です。
⑤届出の区分
届出の区分では、「開業」にチェックを入れます。これは、あなたが新たに事業を開始したことを税務署に届け出るための項目です。もし、過去に個人事業主として活動していて、一度廃業届を提出した後に再度事業を始める場合も、「開業」にチェックを入れることになります。この区分によって、税務署はあなたの事業の開始状況を正確に把握します。
⑥所得の種類
所得の種類には、「事業所得」にチェックを入れます。フリーランスとして事業活動を行い、そこから得られる所得は、原則として事業所得に分類されます。事業所得は、売上から必要経費を差し引いた金額であり、確定申告の際にこの所得区分で申告することになります。給与所得や不動産所得など、他の所得と混同しないように注意しましょう。
⑦開業・廃業日等
開業・廃業日等には、事業を開始した日付を記入します。この「事業を開始した日」は、必ずしも売上が発生した日である必要はありません。例えば、事業の準備を始めた日や、事業を行う意思が明確になった日などを設定しても問題ありません。開業届は、この日から1ヶ月以内に提出することが推奨されていますが、多少遅れても罰則はありません。
⑧事業の概要
事業の概要には、ご自身の事業内容を具体的に、かつ簡潔に記入します。例えば、「Webサイトの企画・制作・運営」「記事執筆、編集業務」「ソフトウェア開発、システム構築」など、どのようなサービスを提供し、どのような活動を行っているのかを明確に記載しましょう。この項目は、税務署があなたの事業内容を理解するための重要な情報源となります。
提出方法と提出先
開業届の提出方法には以下の3つの方法があります。
どの方法で提出する場合でも、開業日から一ヶ月以内に納税地を所轄する税務署に提出する必要があります。
- 税務署の窓口へ直接提出
- 郵送で提出
- e-Tax(電子申告)で提出
最近では、クラウドサービスを活用して、オンラインで提出する方法も人気です。

開業届と同時に提出したい青色申告承認申請書とは?
開業届を提出する際には、もう一つ忘れてはいけない重要な書類があります。それが「青色申告承認申請書」です。
個人事業主は、所得税の確定申告をする際に、「青色申告」と「白色申告」の2つの制度からどちらかを選択することができます。
青色申告を選択し、青色申告事業者になれば税金面で様々な優遇措置を受けることができます。
青色申告のメリットとは
青色申告を行うことで、最大65万円の特別控除が受けられるほか、赤字の繰越、家族への給与の経費化、30万円未満の備品の即時償却など、数多くの税制上のメリットがあります。フリーランスにとって、これらは非常に大きな節税手段となりますので、開業届と同時に「青色申告承認申請書」を提出することをおすすめします。
提出のタイミングと注意点
青色申告承認申請書は、「開業日から2ヶ月以内」に提出しなければなりません。この期限を過ぎると、その年は青色申告ができなくなるため、開業届と同時に提出するのが理想です。
開業届提出後にやるべきこと
開業届を出した後も、フリーランスとして活動するには準備すべきことがいくつかあります。ここでは、提出後にやっておきたいことを紹介します。
会計ソフトの導入と帳簿の準備
開業後は、売上や経費を正しく記帳する必要があります。弥生やfreeeなどの会計ソフトを導入すれば、確定申告の手間も大幅に軽減されます。帳簿は法的にも保存義務があるため、早めに整えておくことが重要です。


屋号付き口座やクレジットカードの開設
事業専用の銀行口座やクレジットカードを用意しておけば、プライベートと業務の支出を分けやすくなり、経理処理が簡単になります。開業届を提出していると、これらの開設がスムーズに進みます。
保険や年金などの手続き
会社員と違い、フリーランスは国民健康保険や国民年金に自分で加入する必要があります。開業届を出したタイミングで、居住地の市区町村で必要な手続きを行いましょう。
まとめ
フリーランスとして活動を始める際、開業届の提出は重要なステップです。提出には法的義務こそありませんが、青色申告による節税や各種制度の利用、社会的信用の向上など、多くのメリットがあります。また、提出自体も決して難しいものではなく、書類1枚で済む手続きです。
これから本格的にフリーランスとして独立したい方は、早めに開業届を提出し、安定した事業運営の第一歩を踏み出しましょう。